私はとにかく面倒くさがりで、あまのじゃく、そして筆まめの間逆。

そういうわけで、facebookなども見るのも億劫ですが、やはり連絡を取るときや近況を知る、知らせることにはとても便利なので、しぶしぶ続けています。

久しぶりに見ると、パリでヴァイオリンと勉強を教えていた生徒さんR君がこの6月末で高校卒業したことを知りました。

懐かしいとともに、彼の成長を本当に嬉しく思いました。R君を教え始めたのは、R君のご家族がパリに引っ越して1年ほど経ったころだったかと思います。まだ英語が不慣れで、インターナショナルスクールの授業は全て英語のため、宿題をしたりするのがとても大変とのことで、主に数学、サイエンスとヒューマニティーという科目など、助けが必要なときに必要なことを教えるというスタイルで授業をしていました。とても控えめR君、とても素直で聡明で、何より根性があり、数学コンクールのメンバーになるほど数学が得意な中学1年でした。

日本の学校と大きく違うのは、勉強の方法は自分で考え、調べ、理論だて、論文を書くのが基本、暗記では全くないということでした。(当然覚えるべきものはありますが)教える側としてとても興味深々、こうやって小学生でも立派に自分の意見をすらすらすらと述べることができる人材が育つのだなあと感心したものです。

ヴァイオリンでも勉強でも共通して言えるのは、「自分で考える」ことがとても大事ということ。脳みそをひたすら回転させなければできません。これこそが学ぶ、習得するということだと思います。

宿題も本当に面白いものが多く、例えば、「あなたはローマ軍の広報係です。兵士を募集するためのキャッチコピー、ポスターを考えなさい」というもの。羨ましすぎます。私が替わってやってみたいぐらいの内容です。またあるときは、「あなたは国連に水問題の指摘と解決法を提案することになりました。どこの国でどんな解決法を提案しますか?」というものもありました。どこの国でどんな問題を抱えているかを調べなければ先にすすめません。問題を見つけたら今度はどうしたらよいのかを考えます。それにはその国がどうしてそういう問題を持ったのか、原因は何かを考えます。そして、解決策。自分だったらどうする?まる、ばつの世界ではないのです。正解はひとつではありません。

日本では、ローマ帝国史をほとんど教えません。本当に残念です。ローマ帝国2000年の中(どこを終わりにするかは議論の余地がありますが)で人間が犯してきた過ち、問題、素晴らしい制度、土木建築技術などなど、ここに凝縮されています。日本こそ、二度と間違いを犯さないためにも、教えるべきものと思います。また世界で何が起きているかも本当に無関心な若者が多いのもとても気になります。島国ニッポン。一人では生きていけないのです。

この学校は有名人のお子さんも多く、面白い逸話が多いのも特徴です。有名な映画監督のお子さんが10歳で退学になっただの(工作の時間にハサミで前の席の子を刺そうとしたらしい)、オランダ人の子の両親とも麻薬中毒で治療を受けるために転校しただの。超超ビッグな俳優さんの娘さんなどもいて、ピクニックでさえがっつりボディーガードが監視してるので可哀想だということも聞きました。あまりにビッグな方なので、「保護者の顔して通学の送り迎え行っちゃおうかな」と言ってみたら、「登録してある人しか送り迎え駄目ですよ、先生~」と諭されてしまいました。また本当のセレブのお子様が多いので、お友達の誕生会によばれるとものすごく困る、ということも伺いました。老舗の5星ホテルの1フロアを借り切ってパーティー、プレゼントの最低金額は約3万円~など。一番笑ったのは、夏休みの長いヴァカンスでは「今年はどこのお城に帰るか迷っている」友達がいるというのを聞いたときです。まさに階級社会をぎゅぎゅっと凝縮した図がそこに展開されていました。日本からの生徒さんは、日本企業の駐在員の方がほとんどですから、所謂普通のサラリーマンです。友達同士のお付き合いも本当に気を使います、とおっしゃっていたお母様達の言葉を思い出します。苦労も多いでしょうが、世界中の色々な人種・文化を持った友達もできますし、世界は多様であることが肌身で感じられるはずです。とても貴重な体験でしょう。私も教えることを通して逆に多くのことを学びました。

R君、また成長した姿を見せてくれることを期待しています。

生徒さんの成長は私の宝物です。