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フェニーチェ劇場で椿姫をみる

   

9月後半から10月にかけてローマ、フィレンツェ、ピエンツェ、ボローニャ、ヴェネツィアに行ってきました。

大好きなローマ、フィレンツェは3度目でしたが、何度行っても感動と驚き、新発見の連続でした。ピエンツァは世界遺産のオルチャ渓谷がみえる中世の姿のままで、そこからの景色はまるでルネサンスの絵画に入り込んだよう。ボローニャはさりげなく面白い町だし、ヴェネツィアは改めて栄華を極めた時代を肌で感じられました。前回ヴェネツィアへ行ったときは改修中で見られなかったフェニーチェ劇場のチケットが手に入ったので、こちらもしっかり楽しみました。

フェニーチェ劇場は、火災で焼失したサン・ベネデット劇場の後をついで、コンペティションで選ばれた案をもとに1792年に完成されましたが、その後1836年の火災と1996年の放火事件により2度消失。ようやく2003年に今の姿のフェニーチェ劇場が完成しました。文字通り、燃え尽きてもまた復活する不死鳥のよう。元の姿を再現するのに大変な苦労があったようです。

とにもかくにも、再建された劇場を一目みたく、これまたラッキーなことに、この劇場で初演されたという「椿姫」をみることができました。劇場に脚を踏み入れたところから、わーっとおなかの底からわきたってくるわくわく感。きたきたーっ。ボックス席がとれたので、鍵を開けてもらって、中にはいり、客席と舞台を目にしたときの衝撃。一瞬にして別世界に入り込むのです。ボックス席で一緒になったご夫婦はメキシコから来られたということでした。世界のあっちとこっちからこの瞬間、同じ場所に存在して、同じ音楽に身をゆだねる。なんて素敵でしょうか。そして、オーケストラピットをのぞくと、楽団員の方達がごそごそと用意したり、楽器を調弦したり、おしゃべりしたりしている。開幕前のゴソゴソした感じも大好きです。劇場が暗くなり、「ラ」がなると色々な楽器がいっせいに鳴り始めます。きたきた!指揮者が登場、そして最初の音。一気に椿姫の舞台へと引き込まれます。歌手の生の声がすぐそこから伝わってきて、迫力に圧倒されました。

今回、つくづく感じたのは、日本にはフェニーチェやパリオペラ座のガルニエのような劇場がないことが本当に残念だということです。フェニーチェでも再建するのに、やはり資金調達がとても大変だったそうです。現代ではここまで手の込んだものを作れる資金をばーんとだしてくれるようなパトロンなど存在しないのでしょう。ミサイルやら爆撃機のような破壊ではなく、創造を産み出す芸術に使うべきなのに。

欧米でも段々クラシック離れをしているようですが、日本でもクラシック音楽はとっつきにくく、生演奏は聞いたことがないという方に良く出会います。もっと人生を豊かに楽しむ場ができたらどんなにいいだろうと思います。しかし、実際はオペラの公演やバレエの公演数は思ったより多いのですが、楽しむのはほんの一部の人に限られているようです。日本のオペラ・バレエは演奏も踊りも技術的に素晴らしい、でも、あと少し何か物足りない。本来、オペラもバレエも音楽だけのものでなく、劇場・舞台・衣裳・音楽全てが揃って始めてなりたつ総合芸術です。あと一つだけ足りないのは、「劇場」です。ため息のでるような劇場が元祖「バーチャルリアリティ」として、昔の人たちが夢物語を仮想体験する場だったに違いありません。「場」から産み出される空気感にさらされると、肌がぞわぞわっとするのです。これこれ。これが欲しい。いつの日か、日本に本格的なオペラハウスが出来てくれたらなあ。これを知らずして人生を過ごすのは勿体ない!

 -音楽にまつわる話


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  • 愛知県出身。東京外国語大学ロシヤ語学科卒業。卒業後商社勤務を経たのちに音楽家に転身したという異例の経歴を持つ。
    2歳半よりヴァイオリンを始めるが15歳で中断。音楽とは一切関係のない生活を送っていたが、退職を決意し、2007年に渡仏。エコールノルマル音楽院(パリ)に入学し、ヴァイオリンをソランジュ・デッサンヌ氏、室内楽を故マリ=ピエール・ソマ氏に学ぶ。
    2011年11月に帰国。2012年2月より東京・大阪を中心に室内楽の演奏活動を積極的に行うと同時に、愛知県にて後進の指導にもあたっている。