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新学期の秋

   

猛烈な暑さから一転、朝と夜はとてもひんやりした空気を感じるようになってきました。こうなると、もう、心はざわざわ、うきうきしてきます。新しいことが始まりそうな予感。

私が留学していたエコールノルマル音楽院は、10月1日が新学期のはじまりです。日本とは違い、秋が新学期なんですね。学校への登録の手続きをし(これがまた乗り越えるまでが一苦労ですが、この話はまた後日させていただきましょう)、今年1年のレッスンや授業を決め、必要な楽譜や教科書をフルート・デ・パンあるいはアリオーゾといった楽譜屋さんで購入し、新たな1年が始まります。

エコールノルマルは日本の大学とシステムが大分違い、1年が単位です。去年はノルマルにいたけど、今年は別の学校に登録した、という生徒さんもいます。また今年は戻ってきた、という人もいたり、本当に様々です。10月の最初のレッスンでまた去年同門だった仲間に出会うと、ビズをしながら「ヴァカンスどうだった?」と聞きあうことから始まります。ビズとは両方のほっぺたにチュ、チュ、と軽いキスをする挨拶です。男女問わず、教授と生徒でもこの挨拶で始まります。男の子同士では、握手もよくみられます。ビズをすると、ああ、フランスにまた戻ってきたな、と実感するもののひとつです。

私が、フランス大好きになった理由のひとつに集団行動をしなくて良いことがあります。新学期でも卒業でも、所謂「式」が存在しないのです。最初は信じられませんでしたが、ない、のです。「式がない」ということは、授業やレッスンの日になったら学校に行き、レッスンあるいは授業をうけるだけ。なんとなく始まる。私にとってはものすごいツボでした。

私は本当に小さい頃から天邪鬼で、右を向け、と言われたら左をむく、そういう子供でした。ファッションやアイドルには無関心。まして、フランス好きでもなんでもありませんでした。憧れなど一切なかった。ただ商社ウーマンであったころ、出張で来たパリは大変印象に残ったものでした。しかし、ファッションやグルメに興味がない私としては、雑誌にでてくるようなおしゃれなフランス、というのは全く興味の対象外でありました。それならなぜ、そもそもフランスに留学することになったのか。

それは「年齢制限」が理由でした。そもそも、私はイタリアに留学したかったのですが、意外とイタリアは外国人受け入れには門戸が狭く、特に音楽で勉強となると入学できる学校がない。ましてや私のような特殊な事情の日本の音大にも行っていない中年おばばには一層厳しい。音楽を学ぶ為に学校に入る=若くなくては成長しない=入学は不可能、ということなのでしょう。それは自分でもよくよく理解している。あきらめきれずにいたところ、同じくヴァイオリン講師をしている姉が、エコールノルマル音楽院を紹介してくれたのです。唯一、エコールノルマル音楽院は年齢制限がなく、ともかくオーディションに受かれば入学できる。これしかない、と、がむしゃらにオーディションに向けて練習したわけです。

商社ウーマンをしていた私が東京から実家に引っ越したのが1月。オーディションは5月初旬。実質4ヶ月あるかないかの準備期間でした。商社ウーマン時代、全くヴァイオリンに触る時間などなく弾けるわけもない状態だったので、まさか合格するとは思っていませんでした。しかし、とりあえずは必死に練習あるのみ。幸い、予想外に合格してしまった。一度動き出したら人生は自分が予想しないスピードで進むこともあるもので、あれよあれよというまに9月を迎え、わけがわからないまま日本を出発することになりました。そして10月。約20年ぶりに学生に戻ったという衝撃、初めてのレッスンに行った日のことはまだ鮮明な記憶として残っています。

10月は新しいことが始まる予感でいっぱいです。

 

パリオペラ座にて

パリオペラ座にて

 

 

 -フランス留学


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    2歳半よりヴァイオリンを始めるが15歳で中断。音楽とは一切関係のない生活を送っていたが、退職を決意し、2007年に渡仏。エコールノルマル音楽院(パリ)に入学し、ヴァイオリンをソランジュ・デッサンヌ氏、室内楽を故マリ=ピエール・ソマ氏に学ぶ。
    2011年11月に帰国。2012年2月より東京・大阪を中心に室内楽の演奏活動を積極的に行うと同時に、愛知県にて後進の指導にもあたっている。